Ethnologue 20th edition のこと

Ethnologue(*1) の最新版、20th editionが2017年2月に公開されました。エスペラントの項目(https://www.ethnologue.com/language/epo)に関して、19th edition から修正された点で注目すべきは「エスペラント母語話者の存在が考慮に入れられたこと」と思われます。

まず話者数ですが、19thでは具体的な数字があげられていなかったのが、20thでは2,001,000となっています。この数字は”家庭内でエスペラントを話す家族が約1000世帯いる (Corsetti et al 2004)”(*2) と"インターネット上に、エスペラント話者が約200万人いる (Wandel 2015)”(*3) という数字を足したもののようで、母語話者が1000人ほど、それ以外が200万人ほど、という解釈だと思われます。(ちなみに18th以前では、"L2 users: 2,000,000(Wiesenfeld 1999)”(*4) とされていました。)

次に言語の状態(Language Status)ですが、19thでは第二言語としての話者しかいないことから、EGIDS level(*5)「9」という消滅寸前の危機言語みたいな扱いになっていましたが、20thでは「3」(Wider communication)という、現実に即した評価になっています。

あとは、言語使用(Language Use)の項目に、家庭内などでエスペラントを第一言語として学ぶ人がいることが、記述されています。

今回の修正で、エスペラント母語話者が一定数いること、現在も世界中で広く使用されていることが広く認識されればと思います。



【注】(リンクの最終アクセス日はいずれも2017.3.20)

(*1) 研究団体「国際SIL」による、世界の言語に関する統計。Simons, Gary F. and Charles D. Fennig eds. (2017). Ethnologue: Languages of the World, Twentieth edition. Dallas, Texas: SIL International. Online version: https://www.ethnologue.com/

(*2) Corsetti, R., Pinto, M. A., & Tolomeo, M. (2004). Regularizing the regular: The phenomenon of overregularization in Esperanto-speaking children. Language Problems and Language Planning, Vol.28(3), pp.261–282. http://doi.org/10.1075/lplp.28.3.04cor

(*3) Wandel, A. (2015). How Many People Speak Esperanto? Esperanto on the Web. Interdisciplinary Description of Complex Systems, 13(2), 318–321. http://doi.org/10.7906/indecs.13.2.9

(*4) Wiesenfeld, L. P. (1999). World almanac and book of facts . Mahwah, NJ: World Almanac Books.

(*5) the Expanded Graded Intergenerational Disruption Scale、言語の危機度や発展度の指標。(https://www.ethnologue.com/enterprise-faq/what-egids-how-it-used)

画像は20th Editionの Language Cloud、紫の点がエスペラント。(出典:https://www.ethnologue.com/cloud/epo)ちなみに19th Editionでは第一言語話者の数をもとにしていたため、Populationほぼ0、EGIDS Level9という、絶滅寸前の位置にあった。

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